毎日数量限定で丁寧に作り上げる。
そう心に決めてお客様のご注文に応えていく。
京都と大阪の中間に位置する高槻市の工房で
受注から製造、発送まで一人で行う。
「本当に美味しいものって何だろう?」
いつも自分に問い続けている。
美味しいだけでなく身体優しく体調を整えるもの
召し上がっていただいたお客様を
ホッコリ幸せにして「また食べたい!」
「あの人にも食べさせてあげたい!」
と思っていただけるものを
作り続ける。
昭和48年、私が小学六年生のとき母親が内職のつもりで始めたそば処「出雲庵」。
開店前の1か月間、大阪の淡路のお蕎麦屋さんで仕事を覚え、
そば出汁は祖母の妹夫婦がやっていた食堂からの直伝でした。
新興住宅地の中で四人掛けのテーブルが3つだけの小さなお店で、
両親とパートさんを一人雇い、近所に出前もしておりました。
調理場には内職でするにはそぐわない直径1メートルはある
そばを湯がく窯をレンガ積みで設置。
大き過ぎると周囲には反対された様ですが
母には絶対に繁盛させる自信があったのです。
案の定、開店と同時にお客さんが押し寄せて大繁盛。
私は学校から帰ると店の手伝いをしました。
出前、洗い物、調理をこなし、
天ぷら・出し巻・丼物を作るのが上手な中学生でした。
その時から自分の作った料理でお客様に喜んでいただくことに
何となく価値観を見出していました。
その小さな喜びが店主を料理の道に進むきっかけになりました。
今「柚子香」で使っているそば出汁は40年前の両親がやっていた蕎麦屋のレシピ。
高校2年の時、母親が私を呼び
「もし、私たちに万が一のことがあれば出汁の作り方をこの机の裏に貼っておくから」と神妙な面持ちで言われました。
高校生の自分に言われてもなあと当時は特に気にも止めていませんでしたが、今思うとこの味があれば将来、何かをする時にきっと役立つことがあるという
「親の愛情」だったと思います。
高校卒業後、周りの友達が大学へ進学する中
私は京都のホテルの日本料理の育成塾に入塾しました。
親方は当時の料理界で「西日本の横綱」と言われた人で日本調理師協会の副会長でした。
修業はとても厳しく、朝は5時前から夜は8時まで、休みは2〜3か月に1回程度。
あまりにも厳しくて、15人いた同期生が一年後の卒業時には4人になっていました。
5年間の修行が終わり、家業に携わりましたが
料理の技術を活かさなければ勿体ないと
京料理の仕出し屋に転業してこれも繁盛しましたが
20年間続けました時、家族の健康問題などで廃業。
その後、最初の修行時代の先輩が料理長している京都のホテルに
呼んでもらい仕事をすることに。
その時料理長の作った「鯖寿司」の旨さに強烈に感動しました。
世間には酸っぱいだけの酢飯が多いのですが寿司酢と共に柚子果汁を
寿司飯に混ぜていました。
その風味が何とも言えず、まさに至高の逸品でした。
料理長は徳島県でも四国のチベットと言われるほど秘境の木頭村の出身で
柚子の一大産地(木頭柚子)です。
90歳を越えた料理長のお父様が手作業で絞った貴重な柚子果汁を
毎年お裾分けしてもらうのが何よりの楽しみでした。
その時に料理長と「日本一の鯖寿司を作ろう」「いつかこの鯖寿司で商売をしよう」と
熱く語り合い、全国の鯖寿司を食べ比べ、研究を重ねました。
そして何百人に試食してもらい試行錯誤の末、出した答えが
鯖は宮城県・石巻産の「金華鯖」
米は新潟県・魚沼産の「コシヒカリ」
昆布は北海道・道南産の求肥昆布
お酢は京都の「千鳥酢」
柚子酢は徳島県の「木頭柚子」
長い年月をかけて完成したのが「黄金の鯖寿司」です。
「鯖の脂の乗りと締め具合」「シャリの風味と粘り」「それをくるむ包む昆布の旨さ」
どれをとっても見事に調和していました。
ホテルに来て10年目のことでした。
この鯖寿司は、何と言っても柚子の香りが味の決め手になるので
独立した時の店名は「柚子香(ゆずか)」にしようと決めました。
小学6年生の時に両親が始めた「蕎麦屋」。
しかしお店では手打ちではなくて機械打ちの蕎麦を出してました。
私の中で、いつか手打ちそばを打ちたいという想いは徐々に高まって行きました。
既に50歳を過ぎていましたが京都の有名ホテルにある
老舗の蕎麦屋に就職、そこからの蕎麦打ちの修行が始まりました。
見るのとやるのとでは大違いでこの難しい技術はとても習得は無理かな?と
半分諦めてかけていましたが、根気強く練習しました。
そば粉を120kg以上使って毎日手打ちの練習した頃
国の現代の名工を受賞した社長の試験に3回目で合格しました。
社長の試験に合格して初めてお客様に手打ちそばを提供することが許されます。
「手打ちそば」は本当に奥が深く、中々満足のいくものを作るのが
難しいものです。
5年間この老舗蕎麦屋で勉強した後、独立。
いつしか仲間に「白銀の手打ちそば」と呼ばれるようになりました。
肝心のそば出汁は両親が始めたそば処「出雲庵」のレシピを忠実に再現。
最初は「手打ちそば」だけだったものを
「京鴨せいろ」「抹茶にしんそば」「京湯葉あんかけうどん」等の
新商品を発売し好評を得ている。
また毎月お送りする「手打ちそば」は「二八そば」と
柚子切り、胡麻切り、梅切り、
抹茶切り等、毎月変わる「変わりそば」をセットにして
定期便もファンの方が増えている。
最高の素材を最高の調理技術で一品、一品を心を込めて作り上げる。
消費期限の短いのは添加物の入っていない証拠。
その愚直な思いがお客様の信頼を積み上げている。
小さいお店ですが本当に美味しくて健康にいいものを
そして召し上がっていただいた人をほんの少しでも「しあわせ」を
感じていただけるお店を目指して今日も研鑽が続く。
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